オールドバカラ・柿右衛門・今右衛門の専門店|京都美商ギャラリー 京都美商ギャラリーは、1961年に京都下鴨で創立した西洋アンティーク・肥前磁器の専門店です。長年蒐集をしてきた経験をもとに、オールドバカラやオールドフランス、古伊万里や柿右衛門などを取り扱っております。量産品ばかりの近年では見られなくなった職人技、手作りの温かみの魅力をより多くの方に身近に感じて頂きたいと考えています。

Sommelier- 連載3(前半) 美術オークションの舞台裏

一般社団法人日本ソムリエ協会が発刊する会報誌にオーナー井村による7回の連載を掲載:第3回目(前半)

ソムリエ-(3)

             

未知との遭遇 オールドバカラ

             

私の美術商としての出発は、オランダ東インド会社の仲介で、長崎の出島からヨーロッパに輸出されていた焼き物を里帰りさせることでした。そのため1970年代後半から、年3~4回ヨーロッパに買い付けに出かけていました。その仕事が一段落しかけていた頃、パリ行きの飛行機の中で、たまたま『夢 ワイン』という江川 卓さんの本を読んで、「ワインって、面白そう。せっかくパリに行くのだからワイングラスを見てみよう」と思い、骨董店を覗き始めた事が「オールドバカラ」をコレクションするきっかけになりました。

 

その時偶然に出会ったのが漆黒全面削り出しグラビュール(彫)技法の花瓶でした。生まれて初めて見る「堂々と、他を圧倒する風格を持った黒いクリスタル」。バカラがジャポニズムの影響を受けて、これほど素晴らしい美術工芸品を創っていたことに強い衝撃を受けました。というのは、ガレやドームなどアールヌーヴォの作品とは違って、バカラは美術工芸品というよりテーブルウエアというイメージが強かったからです。

 

オールドバカラ(黒)花食い鳥文花瓶
1878年頃 バカラ社の資料によると、日本の「漆塗りの花瓶」をクリスタルで表現したという記載が残っている。

 

そして次に浮かんだ疑問はバカラとジャポニズムの接点はなんだったのだろうということ。その答えを導き出すヒントはこれまでの自分の経験のなかにありました。ロンドンでもパリでも骨董市で出会う日本の焼き物は元禄時代か明治時代かどちらかのものという事実。それ以外の時期に制作されたものはほぼ皆無。その答えは前号に書いたように、「マイセン窯が生まれたことにより、それまで輸出で外貨を得ていた有田の古伊万里は、オランダ東インド会社からの発注が途絶えることになるのです。その160年後、パリとウィーン万博に日本の美術工芸品を出品したことにより、ヨーロッパを中心に再び日本の美術に注目が集まりもてはやされることとなります」。

 

パリ万博での日本の美術品から日本人の美的レベル、文化レベル、さらには精神性に、感銘を受け、それが「ジャポニズム」と呼ばれたヨーロッパの美術界で一大旋風を巻き起こしました。マネ、モネ、ルノアールやゴッホといった印象派・ポスト印象派の画家たちへの影響も絶大でした。

 

バカラもその例外ではなかったようですが、さまざまな書籍を調べたにもかかわらず、オールドバカラを扱った資料はほとんどなくこれだけ大きな出来事にも関わらず、歴史の表舞台から消え去ろうとしていたのです。オールドバカラは、ヨーロッパの人々が日本の美を発見した時代の象徴であり、その真実を日本人に伝えなければいけないという使命感をもちました。そして1870年から1900年ぐらいまで、バカラの工房でジャポニズムの作品が生まれたという事実を突き止めました。

オールドバカラ(透明)花食い鳥文花瓶
オールドバカラ(透明)花食い鳥文花瓶
1878年頃 黒の作品を作るためには、まず透明で厚みや彫る感覚を覚える。そして、感覚を頼りに黒い作品を手掛けた。

 

 

ヨーロッパ型美術商としての出発

 

社長 買い付け写真
オーナー井村 フランスでの買い付け風景

 

そもそも私はなぜヨーロッパ型美術商として出発をしたのか。それは一言でいうと、日本の骨董界はきわめて閉鎖的で、縦社会であり、その伝統的なギルドに簡単には入れてもらえなかったからです。もちろん東京や大阪の美術オークションにも顔を出してはいましたが、そこでは思い通りの入札はほぼ不可能でした。なぜならこちらは20代の青二才、周囲は40年、50年とキャリアがあるベテラン、しかも会場の前列は老舗の大店(おおだな)のご主人ばかり。まさに年功序列社会で、オークションに出品されている作品の下見もままならず……というのが当時の私の境遇でした。

 

そんな扱いが日本では普通だった自分にとって、衝撃だったのが、ロンドンのクリスティーズやササビーズでの処遇でした。「ジェントルマン」と呼ばれ、登録書さえ係に提示すれば、落札予想価格1億円の皿でも、東洋の若造に見せてくれるのです。しかもその登録書は、用紙に記入し、パスポートを提示して申請すればわけなくもらえるものでした。

 

サザビーズでのオークション会場
オーナー井村 ロンドン Sotheby’s オークション会場

 

もし日本のオークションの下見会場で、20代の自分が「あの皿を見せてくれますか」と頼むとすれば、「お前、だれやねん…」となる。この大きな違いに、イギリスのオークション社会の成熟からくる開放性を感じました。もちろんそれは大英帝国としての貫禄、鎖国を選んだ日本という歴史の違いが根底にあると理解しています。

 

オークションの取引は信用の世界です。日本の骨董界は、ギルドの仲間同士が互いに身元保証人になることで、万が一、取引した品物のお金が回収できない場合のリスク回避をしているわけです。日本ではバブルの時代、美術骨董が高額で取引され、それと同時に新規の美術商が増えはじめ、トラブル回避も含めて、暗黙の了解のうちに、新規の入会は至難のわざというのは今思うと無理もない話だったと思います。

 

ですから私のような新参者は、上下関係のある日本型の美術商の世界には入り込めないので、公平に門戸が開かれている欧米で美術品を買うしかなかったわけです。そうして私はロンドンやパリ、アムステルダムなどのオークションで落札し、経験値を増やすことで、美術商としての目を養い、腕を磨いていきました。ですから、海外の大きなオークションともなると、日本では普段口もきけない雲上の美術商たちと直接競り合うこともしばしばありました。

             

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京都美商ギャラリーは、1961年に京都下鴨で創立した西洋アンティーク・肥前磁器の専門店です。長年蒐集をしてきた経験をもとに、オールドバカラやオールドフランス、古伊万里や柿右衛門などを取り扱っております。量産品ばかりの近年では見られなくなった職人技、手作りの温かみの魅力をより多くの方に身近に感じて頂きたいと考えています。

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京都市左京区下鴨松原町29
電話番号 075-722-2300
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定休日:水曜日
代表者名 井村 欣裕
E-mail info@kyotobisho-gallery.com

オールドバカラ・柿右衛門・今右衛門の専門店|京都美商ギャラリー 京都美商ギャラリーは、1961年に京都下鴨で創立した西洋アンティーク・肥前磁器の専門店です。長年蒐集をしてきた経験をもとに、オールドバカラやオールドフランス、古伊万里や柿右衛門などを取り扱っております。量産品ばかりの近年では見られなくなった職人技、手作りの温かみの魅力をより多くの方に身近に感じて頂きたいと考えています。

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